この記事では2025年1月13日に惜しまれつつ閉店したイトーヨーカドー藤沢店の50年にわたる歴史と地域社会への貢献、そして閉店に至るまでの経緯を詳しく解説します。
1974年の開店以来、藤沢の街の発展とともに歩んできたイトーヨーカドー藤沢店。「北のダイエー、南のヨーカドー」と呼ばれた商業戦争の時代から、地域の暮らしを支え続けた半世紀の軌跡をたどります。
なぜ、多くの市民に愛され続けた大型商業施設が閉店に至ったのか。その背景には郊外型ショッピングモールの台頭や、セブン&アイ・ホールディングスの構造改革など、時代の大きな変化がありました。
店内に掲示された130枚以上の従業員のメッセージカードや閉店日に集まった数百人の人々の姿からは、単なる商業施設を超えた、特別な存在としての価値が浮かび上がってきます。
この記事を読むことで私たちの暮らしに寄り添い続けた商業施設の真の姿と、これからの地域社会のあり方について、新たな視点を得ることができるでしょう。
開店から閉店までの歩み
イトーヨーカドー藤沢店は1974年6月27日に神奈川県藤沢市鵠沼石上1-10-1にオープンしたんです。従業員数250人が働く総合スーパーとして、食料品から衣料品、日用品まで幅広い商品を取り扱い、地域の皆さまの暮らしを支えてきました。
開店当時の藤沢駅周辺では百貨店やスーパーが次々とオープンして、市民の間で「商業戦争」と呼ばれるほど、サービスや価格の競争が白熱していたんですよ。
とても興味深いことに、イトーヨーカドー藤沢店の開店5日前にはライバル関係にあったダイエー藤沢店も開業。「北のダイエー、南のヨーカドー」という言葉が生まれ、両店の競争は「藤沢戦争」として今でも語り継がれているんです。
ですが、近年は藤沢市内外で郊外型のショッピングモールなどの商業施設がどんどん増えていったこともあり、藤沢駅周辺の商業のニーズが減っていきました。
その代わりに市内では江の島などへの観光客向けのホテルや移住を考えている方向けのマンション、民間企業のオフィスへのニーズが高まるなど、需要が大きく変化していったんです。
そして、2025年1月13日、イトーヨーカドー藤沢店は50年以上の歴史に幕を下ろすことになりました。セブン&アイ・ホールディングスが進める構造改革の一環として、採算の悪い店舗の閉鎖を進めていたことが、その背景にあったのです。
店舗の特徴と変遷
イトーヨーカドー藤沢店は地下2階から地上6階建ての大型商業施設でした。各階には素敵な特徴があったんです。
- 地下1階 食品売り場
- 1階 催事場、アイスクリームショップ「ホブソンズ」、カフェ「サンマルクカフェ」
- 2階〜6階 衣料品、日用品、専門店街
2006年10月には大規模なリニューアルを実施。1階の催事場スペースにカフェやアイスクリームショップを誘致するなど、時代のニーズに合わせた店舗づくりを行っていました。
各階にはエスカレーター横に休憩スペースを設置するなど、「くつろげる店」を目指した工夫も随所に見られました。
個人的に印象に残っているのは地下1階にあった「ポッポ藤沢店」なんです。2020年に閉店してしまいましたが、ラーメンやたこ焼き、ソフトクリームを楽しんだ思い出は多くの方々の心に深く刻まれています。
ゲームコーナーで遊んだひと時など、子ども時代の懐かしい思い出や家族との楽しい時間がこの場所で紡がれてきたんですよ。
地域との関わり
イトーヨーカドー藤沢店は単なるお買い物の場所というだけでなく、地域社会と深いつながりを持っていたんです。
2017年8月には藤沢市とセブン‐イレブン・ジャパン、イトーヨーカ堂、ヨークマートが手を取り合って「地域活性化に資する包括的連携協力に関する協定」を結びました。
この協定をもとにイトーヨーカドー藤沢店では素敵な取り組みがたくさん行われていたんですよ。
- 地産地消・地域経済の活性化に関する事業
- 地域福祉の増進に関する事業
- 災害対策に関する事業
- 環境対策に関する事業
- 子育て支援・青少年育成に関する事業
- 地域の安全・安心に関する事業
具体的な活動内容を見てみると、地元産品の販売促進や高齢者支援、認知症サポーター養成講座の開催、災害時の物資供給、環境保護活動、子育て支援など、本当に幅広い活動を通じて地域社会に貢献していました。
私個人としてはこういった地域に根差した活動こそが、大型商業施設の真の価値なのではないかと感じています。
閉店に向けた動きと地域の反応
2024年8月30日、イトーヨーカドー藤沢店から突然の閉店発表がありました。2025年1月13日での営業終了というニュースは、多くの地域住民にとって青天の霹靂でしたね。
閉店までの約4か月間、店舗ではとても心温まる取り組みが行われました。店内には開業当時の藤沢のまちの懐かしい様子やイトーヨーカドーの歴史をたどるパネルが展示され、従業員の方々の想いがつまった130枚以上のメッセージカードも掲示されたんです。
さらに、6階では藤沢の歴史の写真展示が行われ、昔の藤沢駅前の様子や、デパート戦争と呼ばれた活気あふれる時代を振り返る素敵な機会となりました。
閉店日となった2025年1月13日。イトーヨーカドー藤沢店には、長年の常連さんたちが次々と訪れました。シャッターが下りる瞬間には数百人以上の人々が店舗前に集まり、感謝の言葉をかけ、温かい気持ちを伝えていました。
「イトーヨーカドーありがとう」「50年間お疲れさま」など、手作りの旗を掲げる姿も。半世紀にわたる店舗への深い愛着が、胸に染みる光景でしたね。
最後の営業を終えた午後7時過ぎ、店舗関係者は店内で深々と頭を下げ、手を振るなどして大勢集まった常連客らにお別れを告げました。
安全面への配慮から閉店セレモニーは実施されませんでしたが多くの人々が自然と集まり、イトーヨーカドー藤沢店との最後の時間を惜しみました。
閉店の影響と今後
イトーヨーカドー藤沢店の閉店は地域経済や市民の暮らしに大きな波紋を投げかけています。藤沢駅南口エリアの活気を支えてきたシンボル的な存在がなくなることで、市内の常連客からは寂しさがにじむ声が続々と上がっているんです。
閉店後の建物の活用方法について、2025年1月の時点では正式な発表がありません。けれども、専門家や地域住民の間では、いろいろな予想が飛び交っているんですよ。
マンションと食料スーパーの複合施設になるんじゃないか?藤沢が創業の地であるロピアが出店するかも?なんて声も聞こえてきます。
一方で、イトーヨーカドー藤沢店の閉店は藤沢市の商業環境の移り変わりを象徴する出来事とも言えるでしょう。かつての「商業戦争」と呼ばれた熱い競争の時代は終わり、新しい形での商業発展が求められている。そんな時代の転換期なのかもしれません。
元藤沢商工会議所会頭の田中正明さん(82)は、こんな言葉を残しています。
「長年藤沢の発展に貢献されただけに残念です。市民の食卓や生活を支えることが商業には欠かせません。今後の展開を注視したいですね」。
この言葉には地域経済を担う大型商業施設の大切な役割と、移り変わる時代に適応していく必要性が込められているように感じます。
思い出の場所としてのイトーヨーカドー藤沢店
イトーヨーカドー藤沢店はただのお買い物スポット以上の、かけがえのない存在でした。多くの市民にとって、この店は人生の様々な場面と結びついた大切な思い出の場所だったんです。
ある60代の男性はこんな風に語ってくれました。
学生時代に待ち合わせの場所に使ったり、子どもを連れて遊びに来たりして、たくさんの思い出が詰まっている店なんです。あって当たり前だと思っていたから、本当に寂しいですね
この言葉からは、イトーヨーカドー藤沢店が地域の人々の日常生活にどれだけ深く根付いていたのかが伝わってきます。
閉店日には「イトーヨーカドーありがとう」「50年間お疲れさま」といった手作りの旗を掲げる人々の姿も。こういった自然な行動からも、イトーヨーカドー藤沢店が単なる商業施設以上の、特別な存在として地域の人々に愛されてきたことが分かりますね。
さらに、閉店に際して店内に展示された従業員のメッセージカードには「50年間ご愛顧いただき本当にありがとうございました」といった心のこもった言葉が記されていました。
こういったメッセージの数々からは従業員と顧客との間に築かれた長年の絆が感じられて、胸が熱くなりますね。
イトーヨーカドー藤沢店の設備と利便性
イトーヨーカドー藤沢店は抜群の立地と充実した設備で、たくさんのお客様の心をつかんできました。藤沢駅南口から歩いて約10分という便利な場所にあり、大規模な駐車場も完備。電車でも車でも気軽に立ち寄れる、そんな使い勝手の良さが魅力でした。
駐車場は立体駐車場と地下駐車場を合わせて323台も停められる大容量。30分200円という料金設定でお買い物に応じたお得な割引サービスもバッチリ。
1円以上のお買い物で1時間無料、2000円以上で2時間無料、3000円以上で3時間無料と、利用しやすい仕組みになっていたんです。
2006年のリニューアル時には、車椅子でも使いやすい試着室を設置するなど、バリアフリー化にも力を入れていました。こういった細やかな配慮は、多様なお客様のニーズに寄り添う姿勢の表れと言えるでしょうね。
イトーヨーカドー藤沢店閉店の背景
イトーヨーカドー藤沢店の閉店は単独の出来事ではありませんでした。セブン&アイ・ホールディングスが進める大規模な構造改革の一環として行われたんです。
2023年3月、同社は採算の悪いイトーヨーカドー33店舗を2026年2月までに順次閉店することを発表していました。
この背景には、イトーヨーカドーを取り巻く厳しい経営環境があるんです。特に衣料品や生活雑貨の売り上げが減少して、業績が思わしくない状況が続いていました。
ニトリやユニクロといった強力な競合他社の進出により、食料品以外の売り場にお客さんが足を運ばなくなってしまったことも大きな要因となっています。
さらに、セブン&アイ・ホールディングスは、アパレル事業からの撤退と人口密集地へのエリア集中という新しい方向性を打ち出し、それに伴って店舗数を減らす計画を進めていたんです。
このような事業戦略の見直しもイトーヨーカドー藤沢店閉店の背景にあったと考えられます。時代の流れとはいえ、50年の歴史に幕を下ろすことになり、寂しい気持ちでいっぱいですね。
まとめ
イトーヨーカドー藤沢店は1974年の開店から2025年1月13日の閉店まで、50年以上にわたり藤沢の街と共に歩んできました。開店当時は「北のダイエー、南のヨーカドー」と呼ばれる商業戦争の主役として、地域の発展に大きく貢献してきました。
地下2階から地上6階建ての大型商業施設として食料品から衣料品、日用品まで幅広い商品を取り扱い、多くの市民の暮らしを支えてきました。
特に、2017年からは藤沢市との包括的連携協定を結び、地域活性化や福祉、災害対策など様々な分野で地域社会に貢献してきました。
閉店の背景には郊外型ショッピングモールの台頭や、セブン&アイ・ホールディングスの構造改革があります。しかし、閉店日には数百人もの人々が集まり、手作りの旗を掲げて感謝の気持ちを伝えるなど、単なる商業施設以上の存在として愛されていたことが伝わってきます。
この50年の歴史は藤沢の商業環境の変遷を象徴する出来事であり、新しい時代における地域商業のあり方を考えるきっかけとなっています。
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